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 医学が完成しない古代では、食物が薬としても重要な役割を果たしていました。
中国、前漢時代に著された
『史記』によれば、今からおよそ五千年ほど前に「神農」が、赤色の鞭で草木を打って自ら百草の滋味と水泉の甘苦を味わい、医薬の基礎を創ったと記されています。その神農によって前漢から後漢時代に書かれたといわれる『神農本草経』には、365種の薬効の高い食物を含む薬物が、それぞれの薬効と共に記載され、今日でも漢方処方における原典といわれております。

 このように、中国では長い歴史の中で、何を食べると健康によいか、病気の予防や治療に役立つかという知識を代々伝えてきました。「医食同源」とは、日常の食事で病気の予防や治療を行なうというもので、食事も医療も、その源は同じであるという考え方です。

 そして、これを実現させたものが“薬膳”です。漢方薬には、さまざまな生薬が使われていますが、薬膳料理は、これら生薬の性質や薬効を利用して健康増進や病気の予防や治療の改善を図るための料理で、家庭でも簡単につくることが出来ます。

 また、韓国では古くから「薬食同源」という考え方があり、ゴマ、唐辛子、ニンニク、ショウガ、ゴマ油などを混ぜた調味料を「薬念(ヤンニヨン)」といい、みそ、しょうゆなどの基本調味料と共に使われています。

 病気を治すためには、医師による適切な診断と、その病気に効く薬が必要です。
 薬の生い立ちは、薬草の発見により始まり、自然界の草根木皮が古代の人々の生活の中で試され、長い年月の貴重な経験によって発達し、後世に伝えられてきました。
 現在、薬には化学的に合成された医薬品と、天然の植物や動物から作られる生薬とが使われています。
 薬になる植物は、その全草をとって乾燥したり加工し薬用にするものもありますが、殆どは薬効の最も多い成分(有効成分)が含まれる部分だけをとって作られます。植物により、葉だけのもの、花だけのもの、種子だけを使うものがありますが、草、根、木、皮、果実など様々です。
 このように草根木皮から作られた薬物を「生薬」といい、中国産(漢薬)と日本産(和薬)を合わせて「和漢薬」とよんでいます。


薬膳に欠かせないルール  五味五気

漢方では、陰陽五行説に基づいて、すべての動植物を、酸・苦・甘・辛・鹹の五つの味に分類しています。そして、“五味”は五臓と深くかかわりあっています。

/収斂作用があり、肝、胆の機能を補う。
/固める作用があり、心、小腸の機能を補う。
/緩める作用があり、脾、胃の機能を補う。
/発散作用があり、肺、大腸の機能を補う。
/軟化作用があり、腎、膀胱の機能を補う。(鹹は塩辛いの意)

いずれの
“五味”も過食すると、その機能を損なう。

 このように、食物の五味を知ることで健康に役立てることが出来ます。 さらに、“五味”と並んで大切なのが、熱・温・平・涼・寒の“五気”で、“五気”とは動植物が本来、自然に備えている性質や作用のことです。

/体を温め、興奮作用がある。冷え症によい。
/熱より弱いが体を温める。やはり冷え症によい。
/温熱涼寒のいずれにも属さず、いずれにも偏らない。
/寒より弱いが体を冷やし、鎮静・消炎作用があり、
  のぼせや高血圧症によい。
/体を冷やし、鎮静・消炎作用があり、高血圧症によい。
 
ただし、これらの性質は、熱を加えることで涼寒性が平性に変化するなど、調理によって変わります。例えば、体が冷えている場合には熱温の食物を、逆に熱がこもっているときは涼寒の食物を積極的にとればよいのです。

これらの“五味”“五気”の性質を理解した上で、バランスよく組み合わせていけば、病気を予防し、健康増進に役立ちます。